cap verses / そよ日暮らし

そよふぉとノート
【題詠マラソン2004】参加作品
(2004.03.01〜2004.04.27)

題詠マラソン2004本会場はこちらです。
http://www.sweetswan.com/daiei-2004/




































































































































































しみゆきの銀の原っぱどこまでも まるで空まで渡る足取り  (001:空)

そんなにも安心しあうシジュウカラ ゆびとゆびだけ触れあいながら  (002:安心)

ナンテンの目のゆきうさぎ 運命のうさぎさがして如月に棲む  (003:運)
   
ゆきよゆき絶対的な肯定がぬくもりよりもほしい夜です  (004:ぬくもり) 

幾年も「お内裏様とお雛様」ふたりに似合う名前ほしいね  (005:名前) 

ビィ玉をうらにおもてに透かす午後ひかり土砂降りふたりを洗う  (006:土) 

春休み「おひるね指数学会」のクマの講話を聴きに行こうよ  (007:数学) 

結晶のかたちのままで眠るゆき一姫ニ姫かぞえつづける  (008:姫) 

ききわけのよさを捨てるならひといきに大気圏外とおくとおくに  (009:圏外) 

みずうみのほとりでふたり泣きながらチーズフォンデューたべるデジャビュ  (010:チーズ) 

ダイヤモンドダストをみてる犬たちの背中もしんと思いつめてる  (011:犬) 

侵してはならないふわりおごそかな雪の聖地に裸足でふれる  (012:裸足) 

眠たげにとぎれとぎれのオルゴールあとはうたってあげる おやすみ  (014:オルゴール) 

ていねいにうつくしくむくその人の手のなかで蜜柑みちたりてゆく  (015:蜜柑) 

三月の満月の夜ゆきあかりわずかにずれるゆるむ乱れる  (016:乱) 

無免許であることよりも切実な邪道について考える夜  (017:免許) 

ロビーにて一足はやくつくられた春にかすかにこころをひらく  (018:ロビー) 

あたらしいホーローの鍋うれしくてミルク春めくうららかに沸く  (019:沸) 

十六夜につくづく遊ぶ ほんとうのところでふたりみためはひとり  (020:遊) 

いい日です足りないものは何もなく胃も痛くなく泣きたくもない  (021:胃) 

銀河までゆめゆめはこんでくれそうな上野駅ゆき寝台特急  (022:上野) 

どうしてもうまく失望できなくて未だみどりのみどりのこゆび  (023:望) 

もうだれも物語らない怪談とぜんまいねずみが住まう物置  (025:怪談) 

天国はのどかでゆたかでほんもののおかあさんもいるよ平気よ  (027:天国) 

ああそれは冬のおわりを告げられてめざめたクマが脱いだ着ぐるみ  (028:着) 

薄ら陽に「はるよはるよ」と和太鼓が頓着もなくかるくとどろく  (029:太鼓) 

なげやりな捨て台詞的あきらめはたまにふつうに押し寄せてくる  (030:捨て台詞) 

せわしなくうごめく人の銀色の薬指からゆらり陽炎  (032:薬) 

窓際の椅子が着ている半袖のボタンダウンにこっそりと虹  (033:半) 

ふたりとも取るに足らないものになるロープウェイ・ゴンドラのなか  (034:ゴンドラ) 

くやしいねやっつけたいねこんなとき二重まぶたになるのねあなた  (035:二重) 

二晩も冷たい雨をきまじめに降らせたあとに星が流れる  (036:流) 

愛嬌と思えば思えなくもないわりときれいな尾ひれのかたち  (037:愛嬌) 

手を振るねティルランプがモザイクの闇にまぎれて消えてゆくまで  (039:モザイク) 

上品なねずみとそうではないねずみ仕草ひとつでわかる かんたん  (040:ねずみ) 

清潔なかたちで眠るたいないにさらさらの血が等しくめぐる  (041:血) 

さんざめく映画はうつくしく終わりさらにひとりに堪能になる  (042:映画) 

とりあえずものすごく濃い珈琲をいれてふたりの未来のために  (043:濃) 

熱り(ほとぼり)がさめないうちに今できる最上のことをいたしましょう  (048:熱) 

この空はこころをこめて潮騒をきいてしまったあとのさびしみ  (049:潮騒) 

冴え冴えと月が照らせばおんな湯にいくつも浮かぶ良くないこころ  (050:おんな) 

またそこでくりかえされる世迷言あいたい痛いせつないほわい  (051:痛) 

なみなみとたゆたう墨のなめらかが浮つくこころを黒色にする  (053:墨) 

鍵もなくあまねくのどかな日記帳あくまこあくまどこにもいない  (055:日記) 

どちらかが力をぬけばせっかくの矛盾すんなり正されてゆく  (059:矛盾) 

劇的に雷が来て守るべきものの順位をあきらかにする  (063:雷) 

イニシャルが同じなことがうれしくて ローマ字おぼえた子どもみたいに  (064:イニシャル) 

いつか見たふたつのせなか水色のみずたまのなかを帰り続ける  (065:水色) 

空までも研ぎ澄まされるけはいして鋼の月も薄くするどい  (066:鋼) 

闇雲にめそめそと降る蒼雨にやられないでね傘をさしてね  (068:傘) 

どうしても扱いかねる言葉です素通りさせてください「奴隷」  (069:奴隷) 

にせもののわたくしでしたほんものはこんなにもほら手ごたえがある  (070:にせもの) 

あす朝のお天気は春 おおらかな追い風ぬるく吹くことでせう  (071:追) 

建てたての砂のお城の回廊の彼らにも波にべなくよせる  (073:廊) 

くちべたな恋するキリン話したいことはいくつもわきいでてきて  (074:キリン) 

ここからはひとりでへいき そう言うと空へ空へと伸びるあさがお  (075:あさがお) 

まんなかにきらきら降つてきたひかり名づけてはだめそつとみるだけ  (076:降) 

腐葉土になれないもののたましひもいつかとけこむ木霊の坩堝  (077:坩堝) 

あやふやにほつれかけてたポケットに細かな小さな清楚な縫い目  (080:縫い目) 

チグリスとユーフラテスが授かつたもの イラクの土はおぼえてるのに  (081:イラク) 

帰り道あぜのわだちに軟弱なこころづもりが落ちていました  (082:軟) 

しらかばの裸体しろくてまつしろで珠のようです水はじく皮膚   (083:皮) 

やすっぽい悲しみに暮れる抱き枕だいて眠ってあげる おやすみ  (084:抱き枕) 

再会のさみどりの丘かぜが来てたまゆらかえるあのころの空  (085:再会) 

パーキングエリアをひとり占拠して描いたチョークの滑走路から  (086:チョーク) 

混沌と途方に暮れるこの道は100エーカーの森に行く道  (087:混沌) 

裏山にりんりんと咲く福寿草かげひなたなく文句なく春  (088:句) 

誘惑のこもれびが降るけものみち歩くそばから土が息づく  (089:歩) 

この森に自生している木琴が奏でてくれる「よろこびの歌」  (090:木琴) 

埋もれ木にさとされている敬虔なわたしたちです凪のみずうみ  (091:埋) 

お祝いに家族ぐるみでいっせいに咲いてくれそうカタクリの群れ  (092:家族) 

一列に並ぶ三脚花びらの散るのを待っているのなんなの  (093:列) 

遠くまで来てしまったね はっとして 二光年ずつあとずさりする  (094:遠) 

こんこんとまぜてもまぜてもまざらない油一滴わたくしの海  (095:油) 

厳密にいうと「運命」の類い 触角がまたうごめいている  (096:類) 

曖昧にするしかなくて夕まぐれ 長い目でみるお稽古をする  (097:曖昧) 

溺れてもいいねいいよねそれなのにどちらともなく保つバランス  (098:溺) 

大地からこみあげてくる絶唱をうけいれるべく春がととのう  (099:絶唱) 

無理もなくつじつまもあうそのまんまインターネットのおかげです らぶ  (100:ネット) 



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